介護においてバリデーション療法が持つ意味

要介護者は身体が不自由で、介助なしでは自分の思うように身体を動かすことができません。そのため、要介護者は日常的にストレスが溜まりやすいと言えるでしょう。こうした要介護者は、他人から存在価値を認められたいという承認欲求を持っていることは否定できません。たとえ認知症患者でも、潜在する承認欲求を満たせるよう介護職員が働きかける必要があります。要介護者の承認欲求を充足する上で、バリデーション療法が効果的だと言われています。バリデーション療法とは、認知症患者とコミュニケーションを図るスキルの一つで、患者の言葉に耳を傾けることを重視するセラピーです。バリデーションとは承認を意味しており、バリデーション療法が認知症患者の承認欲求に応えることを目的とすると言って良いでしょう。バリデーション療法では、患者の話をじっくり聴くために誠実な態度で相手の目を見ながらゆっくりと頷く動作などが求められます。時折、肩や手の甲に触れるスキンシップも必要でしょう。

こうした姿勢は、介護のあらゆる場面で欠かせません。介護サービス利用者の発言に集中し、時には簡単な質問をはさみながら傾聴することが大切な業務なのです。認知症の高齢者にとって重要なことは、丁寧な介助だけでなく、自分の傍に話を聴いてくれる人がいることなのです。介護職員が利用者の言葉に耳を傾けて、要介護者の気持ちに寄り添う姿勢を見せれば、信頼関係が構築され介護業務もやりやすくなるでしょう。そのため、バリデーション療法を介護現場で生かすことが、喫緊の課題となりつつあるのです。