バリデーション療法が重視される理由

要介護者に接する際は安全の確保とともに、相手の意思を尊重しなければなりません。要介護者は自力で歩くことも困難な状態であることも多く、生活におけるほとんどの事柄に介助作業が必要です。何をするにも他者の助けが欠かせない状態にあることに負い目を感じていることが多いため、そのような心境への配慮が不可欠と言えます。認知症を患っている人も例外ではなく、言動が支離滅裂であっても本人の中では整合性が取れているため、頭ごなしに否定してはいけません。否定されることは、大きなストレスになるもの。否定することで、さらに認知症を悪化させてしまう恐れがあります。バリデーション療法は、そのような事態を避ける療法として注目されています。

バリデーションは、認可や妥当性という意味があります。バリデーション療法は認知症患者の言動に共感し、自主性を尊重するのが特徴です。認知症患者は過去の記憶と現在の状況が混濁しているため、辻褄が合わない言動を取りがちです。バリデーション療法はそのような言動に対して頭ごなしな否定をせず、共感の姿勢を見せたうえで本人に修正を促します。その際も誘導や強制をしないのがバリデーション療法の本質なので、非常に手間がかかる方法であることは否定できません。しかし介護は要介護者を労りつつ、自主性を損なわないように配慮することが何よりも重要なポイントです。そのため、人としての尊厳を尊重しながら適切に介護を行うバリデーション療法は高齢者や認知症患者に最適と言えます。